夏季要請行動2022

 7月26日(火)14:10~15:10、群馬県庁昭和庁舎31会議室において、群馬高教組・夏季要請行動第1部(各職場からの要請書に基づく要請)が行われました。県教委からは、総務課3名、管理課2名の計5名が参加。高教組からは本部役員6名に各職場から7名が加わり計13名が参加しました。
 以下、概要を報告します。

1、特に教育条件整備では、多くの職場から特別教室のエアコン設置が要請された。厚生労働省のガイドラインでは、使用者は労働者に28℃以上の環境で仕事をさせてはならない。これは健康維持と仕事の効率の観点から25℃以下を適温とし、我慢の許容限度として28℃を設定したもの。今夏の要請行動でも猛暑で苦労している職員、生徒の実態を伝えたところ、教育長に伝え、改善を図るという誠実な姿勢を示してもらえた。

2、多忙化を解消するために、毎年、削減した業務内容を公表するように提案。今回、特に話題となったのは、定期試験のPDF保存。この件については、従来通りの紙媒体保存と新たにPDF保存との二重の保存を指示された学校がある。一部の学習塾の要求に対応するために全県で仕事が増えていること、また今後、授業プリントや小テストの開示を要求された時にどう対応するのか? 県としてもっと対応方法を検討すべきと確認。
この件に限らず、マナーアップ運動が始まれば他の方法を考えずひたすら続ける実態、総体開会式には疑問の声が多いのに生徒たちの昼食休憩を削ってまで練習させてマスゲームを壮大化させてきた責任の所在など、年々多忙化が進む要因を取り上げ、スクラップ&ビルドの「スクラップ」を可視化していくべきと説明。勤務時間内で終わらない業務の多さを解消するには職員を大幅に増やすか、業務を減らすしかない。県教委はこの点に関して知事部局から指導されているので「これを削減した」と具体的に毎年示してほしい。各職場では管理職から「すみませんね!忙しいとは思いますが、これをしてください!」と言われ、善意で頑張ってしまう図式がある。これが自分自身のことで終わらず、翌年の誰か、未来の若手教職員に繋がる負荷であることを意識すべき。働きやすい職場、誰もが納得できる仕事量になるようシステム全体の改善を求めたい。

3、昨年度からの懸案である非常勤職員の待遇改善について、当事者から直接、制度の改善を要請。具体的には、同一労働同一賃金の原則に反する二重制度の解消、同一校勤務10コマ以上で年間3コマ分の支給要件の緩和。教職員への待遇が良ければ「先生が見つからなくて補充ができない!」といった事態は起きないはず。非常勤職員を単なるコマ合わせと見る姿勢は早期に改善すべき。年間を通じて安心して働ける制度にしてほしい。

 7月26日(火)15:10~16:15、県教委3課(総務、学校人事、高校教育)に対し、夏季要請行動第2部(高教組夏季要求書に基づく要請)が行われました。
 以下、概要を報告します。

総務課要請報告〔東宮〕
 場 所:昭和庁舎22会議室
 参加者:【高教組】春山副執行委員長(前東)
          茂木(前商)
          東宮(非常勤)の3名
     【総務課】角田次長、本山秘書人事係長
          新井主任の3名

 夏季要求書の多岐にわたる項目の中で、特に総務課に対して要請したい項目を中心に約1時間の要請であったが、総務課からの率直な発言もあり、雰囲気は基本的に穏やかなものであった。
 主な内容は「非常勤講師や地公臨教諭などの待遇改善に関すること」「高校総体の開会式の簡素化や部活動指導などの長時間勤務の解消に関すること」「定期試験問題のPDF化問題や高校入試へのマークカードの導入などの業務の健全化に関すること」などであったが、他に「多忙化解消のためにどんな事業をスクラップしていくのか」「恣意的な人事異動をさせないようにしてほしい」などの要請も行った。最後は総務課より、定年延長の問題に関し「大まかなところは県職連交渉でやるが細かなところは各単組の秋からの交渉による」という主旨の発言もあった。
 総務課としては「高教組からの要請はきちんと平田教育長に伝えている」とし、高校総体の開会式については「教育長は今年度のような形式を評価しており、コロナが収束しても以前のような大規模なものに戻すような流れにはならないのではないか」との発言や、高校入試についても「客観部分に関してはマークカードの導入には抵抗が無いのではないか」という発言もあった。
 総務課は具体的な制度設計をする部署ではなく、今回の高教組の多くの要求が直ちに認められていく可能性も正直低いと思われるが、毎年継続してこのような要請行動を行っていくことの意義を再確認した時間でもあった。

学校人事課要請報告〔吉澤〕
 場 所:昭和庁舎31会議室
 参加者:【高教組】萩原書記長(伊工)
          吉澤執行委員(勢多農)
          原田(安中総合/現業部)
          田中(館林女/司書部)
          坂田(清陵/非常勤)
          内川(高経附)の6名
     【学人課】小池次長、堀口管理係長
          栞原管理主事
          長谷川県立学校人事係長
          反町管理主事
          真水免許/電算係長
          大澤主幹
          立見補佐(給与係長)
          佐藤主任の9名

「現業職の専門職としての位置づけと新規採用」「地公臨の採用と賃金」「人事異動時の個人の意思尊重」について[原田]
・賃金改善(賃金モデルがなく将来の見通しが立たない)
・人員の確保を(民間委託をせず新規採用を)
・人事異動について(太田フレックスで2人同時の移動があったので考慮を)
・現状の年金について(年金額が少なすぎる、シミュレーションでは月4万)

「事務職、学校司書の待遇改善」「現場の求めに応じた職員数の充足」について[田中]
・給与体系の不備あり(採用時点で史書の記載不備、同期採用者との給与格差が大きい、有資格者が県外へ流出している、正規職員として司書の正規採用を)
・現状における資格取得の研修制度の充実を
「非常勤職員の雇用・勤務条件の改善」について[坂田]
・授業以外の業務は不随でなく本来業務である(採点、準備、成績処理は別時間でしかできない)
・年休、特別休暇の増加を(入試時などの対応、振替不可能な事が多い)

「高齢者の雇用・勤務条件の改善」「ハラスメントの根絶」について[内川]
・多様な勤務制度の導入を(高崎市は8割勤務8割給与を実施)
・管理職からのハラスメントの訴え先がない

「給特条例の改正」「多忙化・過密労働の解消」「地公臨職員の採用と賃金」について[吉澤]
・採用試験の受験者の減少原因は(労基法違反、給特法、ブラック仕事、無限の長時間勤務など)
・全国に先駆けて文科省への改善申し込みをして欲しい
・働き方改革に相反する新規業務の増加と現状業務の軽減なしの改善
・将来の教育のために新規教職員の採用を増やして欲しい

「女性部アンケートより」[萩原]
・家庭状況を無視した異動(長時間通勤、子どもの教育問題、勤務時間の把握と対策)
・ハラスメントの訴え先がない(校長、教頭からのハラスメントについて現状泣き寝入り状態)

高校教育課要請報告〔今井〕
 場 所:昭和庁舎33会議室
 参加者:【高教組】澁谷委員長(前高特)
          今井執行委員(前工)
          坂本(高経附)
          大島(前女)の4名
     【学人課】小和瀬次長
          渡部生徒指導係長
          原補佐、須田補佐
          毒嶌指導主事

1、高校入試について
 入試一本化へ向け記述や長文を書かせる問題をかえるよう要請(採点ミスで教員3割が処分された茨城の社会科は解答方法を簡素化し、ほとんどが記号で、記述はカタカナの語句が2つのみ。誰でも採点できる問題に変更)。国語や英語では夜8時頃まで採点がかかる学校もあり、デジタル採点システムの導入を求めた。県教委は「開示請求があれば問題用紙も開示する」とし、採点基準について「全く同じ答を書いてA校は3点、B校は2点と違うのは問題ない」と説明。

2、学校説明会や体験入学について
 準備やリハーサル、会場やパンフの費用など大変だが、HPを見れば済むのではないか? 県教委が音頭をとってなくしてほしい。

3、観点別評価について
 文科省は「観点別評価と成績が一致(連動)しなくてもよい」としているが、中学では生徒や保護者の理解が得られず、システムを導入し成績と連動させるケースがある。高校は1クラス40人で何クラスも見るので評価はより困難になる。観点別評価の意義はわかるが、きちんとやるならば現場の実態をよく見て、多忙化を解消し、きちんとできるような環境を整備してほしい。これに対し県教委は「やると決められていることは生徒のためにきちんとやっていただきたい」と言うのみ。

4、スクールソーシャルワーカー(SSW)について
 特別支援学校や定時制、フレックススクールでは家庭が困難を抱えているケースも多く、連携・活用が求められている。SSWは特別な資格があるわけではなく、退職校長がなっていたりするのが実態で、小中での導入では実際に機能していない場面が見られる。高校では管理職がSSWに対する知識を欠き、十分に活用されていない。小中校と高校の連携も必要。県教委は「生徒指導主事や教育相談の会議で状況を伝えていただければ派遣可能と説明している」と答えた。

5、定期考査のPDF保存について
 公文書開示に対応するための措置であり「紙に残す必要はない」と県教委は明言。保存は「PDFのみでよい」と確認。

6、選挙出前授業などの雑務について
 知事肝いりの選管委託事業だが、高校教育課から意識調査回答の指示文書が来た。3年生に年4回行なうが、学校の手を煩わせずにやってほしい。金のかかる雑務はやらずに済むようにしてほしい。

7、生徒指導・校則について
 世間一般にはダイバシティ&インクルージョンという大きな波がきているが、学校現場では相変わらず「みんな同じが良い」「そろっていると見栄えがいい」という感覚にとらわれている。現場の実態をよく見て、改善するよう動いてほしい。

澁谷委員長まとめの挨拶
 パラダイムシフトが起こっていると感じている。学校の体質や文化は簡単に変わらないが、変えていかないと生徒がかわいそうに思うこともある。「今までやってきたから」ではなく、転換をはかる必要がある。

教育長との懇談2022

 6月28日火曜日、16:30~17:10(予定では~17:00でしたが10分延長)群馬県庁24階の教育長室にて、教育長との懇談を行いました。
 参加者は県教委側が、平田教育長、角田次長(総務課)、小暮次長(学校人事課)の3名。高教組側が、澁谷執行委員長、水田副執行委員長、萩原書記長の3名でした。
 以下、懇談の概要を報告します。

澁谷委員長
 まず、新学期開始時の教職員の欠員数を確認したい。(同席した小暮次長より3名との報告)
 全国的に教職員の欠員が問題になっているが、群馬でも欠員が生じている。不登校等で生徒が学校から離れ、病気等が原因の休職および退職で教職員が学校を離れ、欠員が生じても人が見つからず補充が困難である上に、採用試験の受験者数も減ってきている。学校から人がどんどん離れている。これは学校の魅力が失われているという見方もできるが、この原因をしっかり考えて対処してほしい。学校では生徒同士のいじめがあり、職員同士のハラスメントもある。ハラスメントに対しては、今はモグラ叩き的な対処を一生懸命やってもらっているが、それが限界に来ていることは、やっている事務局の方も感じているはず。もっと根本的な対処が必要。魅力が失われていることやいじめ、ハラスメントが起こってしまうことの根には同じ問題があるように思えるが、教育長はどう考えるか。

教育長
 澁谷先生はどう考えますか。

澁谷委員長
 職員も生徒も「評価、評価」で息苦しさを感じている。この息苦しさが学校の魅力を失わせている大きな原因の一つと考える。(※1)学校がどんどん楽しくなくなってきている。
 また、新しい指導要領では観点別評価が導入されたが、3つの観点に分けてそれぞれに評価を出すことにどのような意味(メリット)があるのか。このことによる教員の負担感は大きく、多忙化解消どころか多忙化が増大する。また、分析的に評価し、それで終わりにすることは、科学の世界では場合によってはありうるが、人間を評価するときにこれが有効かどうか。「木を見て森を見ない」という譬えがあるが、結局こんな評価の仕方で、ひとりの人間を総合的に捉えられるとは思えない。
 分析的に、ということで言えば、国語を文学国語と論理国語に分けるというのも全く意味のわからないことだ。そもそも国語という教科をそのように分ることにどのようなメリットがあるのか。また分けることができるのかどうか。論理国語の教科書に漱石の作品が掲載できるかどうかが問題になったが、問題になるは当然でもあり、同時に問題にして議論すること自体が時間のムダでもある。

水田副委員長
 観点別評価では特に「主体的に学習に取り組む態度」の評価がわかりにくい。

教育長
 主体性は生徒の活動を見て評価できませんか。

澁谷委員長
 例えば協働的な学習を行う中で主体性を評価することはできるかもしれないが、今は新型コロナでそのような学習がやりづらくなっている。中には主体性を課題の提出状況で測ろうとしている人もいる。しかし与えられた課題をやることが主体的なのかどうか。
 教育委員会も上から与えられたものを無批判に受け入れて現場に下ろすのではなく、きちんと内容を検討してもらいたい。科学の理論でも、新しい理論が出れば必ずそれが正しいか厳しく検討されるはずだ。学習指導要領については、検討した上で「必要なら柔軟に対処して良い」ということを誰かが言ってほしい。文科省の事務次官まで行って退職した前川喜平さんも指導要領には柔軟に対処して良いと言っていた。

教育長
 前川さんは、指導要領は最低基準だと言っていましたね。(※2)

水田副委員長
 私からは特別教室のエアコンの設置についてお願いしたい。例えば音楽の授業をエアコンのない音楽室で行うのはあり得ないことだ。

澁谷委員長
 本校の職員室のエアコンも故障し、ガスを補充しながらなんとか動かしているが、動かなくなったことを考えると恐ろしい。エアコンの整備は早急に対応すべき課題。

萩原書記長
 教育長になって群馬の学校の様子を見てどうお感じになったか。

教育長
 生徒がとても生き生きとしている。最近では工業高校の様子を見たが、生徒たちはとても楽しそうにしていた。それを支えてくださっている教職員の皆さんには感謝の気持ちしかない。

澁谷委員長
 そのように見ていただいたのはとてもありがたい。生徒たちは本当に素晴らしい。だからこそ私たちは現場を離れずにこうやって仕事をしている。けれどもその一方に、学校を離れていく生徒や職員がいることも確かだ。私たちはそれが残念で仕方ない。こういう人たちにもぜひ目を向けて対処してほしい。「誰ひとり取り残さない」だ。ぜひお願いしたい。時間なのでこれで終わりにする。時間をいただいたことに感謝する。

教育長
 今日はありがとうございました。皆さんの熱意はよくわかりました。


【 注 】
(※1)
 教員評価を導入した時の担当課長だった前川喜平氏も「私も国家公務員ですから、部下の評価もしていました。でも、一人一人個性が違うし、評価なんて簡単にはできませんから。前回この人をいい評価にしたから今回はこれくらいにしておこうとか、かなりいい加減な評価をしいていました(笑)。たしかに誰が見ても優秀な人と、誰が見てもちょっと問題がある人はわかりやすいのですが、それ以外の膨大な中間層については、ほとんど評価不可能だと思います。」(中略)「本来、子どもたちと向き合うという仕事に割くべきエネルギーが評価をするために使われるという、本末転倒なことが全国で起きている。評価をすれば競争が起きて、競争が起きれば成果が上がる、という考え方が浸透してきた結果ですね。これは民間企業で行われていた成果主義を、公務の部門に取り入れたと言われていますが、今はもう民間企業のほうが成果主義をやめると言っています。成果主義では成果が上がらないことがわかったから。それなのに、学校や大学や役所ではそれをまだやっている。それが、現場が疲弊する一つの原因になっているんじゃないでしょうか。」(2022/4/27 内田 樹寺脇 研前川喜平「教育鼎談」 P159)と述べています。

(※2)
 「学習指導要領は最低基準」と明確に発言しているのは前川氏の先輩で、「ゆとり教育」の推進者であった寺脇研氏です(前掲書P215)。前川氏は(※1)での発言も含め、法や指導要領に対して、余裕を持った「運用」が必要であるとしばしば述べています。しかし、現在の管理的な立場にいる方々にとっていちばん苦手でわかりづらいのがこの「運用」なのではないでしょうか。
 「学習指導要領は最低基準」という発言は場合によっては誤解を生む発言です。「最低基準なのだからこの上にもっと積み重ねろ」とも読めます。しかし寺脇氏はこの後に「その基準をもっと下げていいと思うんですよ」と続けています。つまり、学習指導要領の縛りをもっと緩くすべきということです。「運用」の苦手な役人には縛りの緩い法令を出さないと身動きが取れなくなるという文脈です。

大山さん(ぐんまちょっとチャット・ホスト)へ

 「ぐんまちょっとチャット7.10」終了後、語り足りなかったことがあったのでホストの大山さんへメールを送りました。
 私(澁谷)の個人的な見解ですが、群馬の今後の教育の状況を考える上で、何かの参考になる部分もあるかと思いますのでここに掲載します。

大山さんへのメールです。(クリックっするとPDFが表示されます)